大家さんの悩み ~賃料不払いの場合~

Q 賃借人の一人が、今年1月末から賃料の支払いが遅れて困っています。2月分まではもらいましたが、3・4月分が支払われません。催促しましたが連絡がとれなくなりました。すぐに追い出す事はできますか。

A 退去してもらうためには賃貸借契約解除の必要があります。そして判決があっても出て行かない場合には、執行という手続きを行います。相手との交渉で退去とのことなら、このプロセスは不要です。ただ相手が交渉しても出て行かないなら、裁判する必要があります(賃料を滞納しているにもかかわらず、引っ越し代や明け渡し料を請求する悪質な賃借人の場合も法的な手続きを視野に入れるべきです。)

Q 1ヶ月の賃料延滞でも契約の解除が裁判所でも認められますか。

A 裁判所は賃貸人を保護する趣旨から1ヶ月程度の遅滞では解除を認めません。賃料の不払いの場合、確実に解除が認められるためには6ヶ月程度の遅滞が必要です。(無断改造などがある場合は、もっと短期間で解除できます)。よく賃貸借契約書に賃料は1ヶ月でも遅滞した場合にはただちに明け渡すという記載があります。しかし、かかる文言にかかわらず賃料の延滞期間などの事情を考慮して賃貸借の解除ができるかを決定します。
Q では、6ヶ月経過してから弁護士に相談するべきですか?

A 裁判が始まって、判決までに訴え提起から6ヶ月程度の時間が必要な場合もあります。6ヶ月経過してからだと、6ヶ月加えて裁判に6ヶ月で賃料滞納から約1年も経過してしまいます。賃料の支払いが見込めない状況の場合には、3ヶ月程度の延滞の段階で弁護士に相談して問題の解決を図るべきです。弁護士が交渉する場合には、法的な見通しを前提として、明け渡し交渉に入る事ができますので効率の良い交渉が可能です。

弁護士法人 アクティブイノベーション 横浜事務所所長 片山 栄範

(東京新聞TODAY 2010年6月11日号より)