Q 20万円の敷金の中からクリーニング代など原状回復費用を差し引き、4万円を返還しましたが、「通常使用で痛んだ部分の原状回復費用は、賃貸人が負担すべき」と賃貸人が敷金全額の返還を要求しています。
A 部屋を使用できるようにすることは、賃貸人の義務です。従って、通常の使用により痛んだ部分の費用(通常損耗)は、賃貸人が負担することになります。通常使用による劣化の補修なら敷金を全額返還する必要があります。
Q退去時に賃借人がクリーニング代や、クロスの張り替え代金を返すという特約が賃貸借契約書にありますが
A このような特約は、本来賃貸人が負担すべき通常損耗部分の修繕費用について、賃借人に負担させるもので、賃借人の義務を加重するものです。特約が有効であるためには、特約が明確に合意されていることが必要です。 そして、明確な合意というためには、少なくとも、①賃借人が本来負担するべきでない通常の損耗についての補修費用を負担すること、及び②費用を負担するべき通常損耗の範囲についての2点につき明確な合意があることが必要です。
① は、賃借人を保護することですから、➊賃借の賃料に含まれ、負担するべきでないという点、➋➊の点を理解した上であえて賃借人が負担するという点について、合意が必要です。
② は、具体的に何に対し(対象)、いくらなのか(金額)の2点について明示が必要です。単にクロス張り替え代金、畳代金、クリーニング代金としても、賃借人は、それがいくらか契約時にわからないため明確な合意とではありません。
また、いわゆる東京ルール以上の2点に加えて、暴利行為でないことが定められています。
敷金については、以上の点を踏まえて、賃貸借契約書を改めて見直してください。
弁護士法人 アクティブイノベーション 横浜事務所所長 片山 栄範
(東京新聞TODAY 2010年7月9日号より)